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テクニカルレポート
2024.09.20
低GWPが切り拓く「フッ素系液体」の可能性
ダイキン工業(株)

 はじめに(洗浄用途におけるフッ素系洗浄剤)

産業用の洗浄用途に使われる洗浄剤には大きく分けると水系、準水系、炭化水素系、アルコール系、塩素系、臭素系、フッ素系がある。フッ素系は溶解性や浸透性に優れ、高い乾燥性、高い材料適合性など機能面で優秀なだけでなく、一般的には引火点がなく安全面から見ても理想的な洗浄剤といえる。

フッ素系洗浄剤を用いた浸漬超音波洗浄は、同じ流速での衝撃力が高くなるため、電子部品などに付着したパーティクルを脱落させる洗浄方法としては最適といえる。 

 

②フッ素系液体『DAISAVE SS-54』

『DAISAVE SS-54』は当社が2023年10月に上市したHFE(ハイドロフルオロエーテル)構造のフッ素系液体であり、主に洗浄用途で使用されている。

 

2-1.『DAISAVE SS-54』の主な物性

『DAISAVE SS-54』の主な物性を表1に示す。

表1 『DAISAVE SS-54』の基本物性

 

『DAISAVE SS-54』の沸点は54℃となっており、適度な揮発性を有する。凝固点は−92℃、密度は1394kg/m3、表面張力は16.2mN/mである。地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)は101であり、HFEの中でも特に小さい値を示す1)

また、引火点を有しておらず、法規制適合性、環境負荷低減など多岐にわたるメリットを有する。

 

2-2.『DAISAVE SS-54』の材料適合性

『DAISAVE SS-54』の材料適合性を表2に示す。

表2 『DAISAVE SS-54』の材料適合性

 

『DAISAVE SS-54』は様々な樹脂、エラストマー、金属材料と高い適合性を有する。使用方法によって適用可否が異なる場合もあるため、使用する部材との適合性等は別途事前に評価いただくことを推奨している。

 

③『DAISAVE SS-54』の洗浄以外での用途

以下では、洗浄以外の分野において『DAISAVE SS-54』が使用できる可能性のある代表的な用途を紹介したい。

 

3-1. 熱媒用途

熱媒用途では、半導体業界で用いられるチラー向けの熱媒体やヒートパイプおよびヒートポンプの作動液などとしてのフッ素系液体の使用が期待される。 

『DAISAVE SS-54』は、使用可能温度範囲が広いだけでなく、熱伝導性が高く熱的安定性も優れるため幅広い温度管理要求に対応できる。

 

3-2. 溶媒用途

溶媒用途では、フッ素系グリース・オイル(潤滑剤)やフッ素系コーティング剤の希釈、反応溶媒などとしてのフッ素系液体の使用が期待される。

『DAISAVE SS-54』は、低粘度で表面張力が小さいため、浸透性と均一な濡れ性を生じさせることができ、速乾性があるため潤滑面に導入された後に素早く乾燥させることができる。 

 

3-3. クリーニング用途

クリーニング用途では、汚れ落ちだけではなく仕上がった生地の風合いや手触りなども重視され、同時にクリーニング臭や溶剤残りによる化学やけどなどにも配慮が必要である。

『DAISAVE SS-54』は、蒸留再生することで常に新鮮な状態で利用してクリーニング臭を抑制し、速乾性により溶剤残りを防止、石油系溶剤と比べ衣料へのアタック性が低いことから軟らかい手触りで柔軟な仕上がりとなり、ウールやポリエステルなどでの静電気発生量も抑えることが可能である。 

 

④おわりに

低GWPというコンセプトのもと、当社はフッ素系液体『DAISAVE SS-54』をリリースした。引き続き、環境影響に配慮しながら、様々な業界のニーズに対応するために『DAISAVEシリーズ』のラインアップを拡充していく。

ぜひ今後のラインアップ拡充にご期待いただきたい。

 

<参考文献>

1)IPCC 4th Edition:Intergovernmental Panel on Climate Change

2)日本溶剤リサイクル工業会ホームページ

会社名
ダイキン工業(株)
所在地