
①はじめに
「第36回 長野実装フォーラム 〜傳田精一先生追悼記念フォーラム〜」が、2024年9月20日(金)の午後、長野市で「日本半導体、新時代を巡る対応」をテーマに開催された(図1、表1)。TSMCの熊本工場は、2024年12月の初出荷を目指して活動し、すでに第2工場の造成も始まっている。その他の大型助成も含め、日本政府は日本半導体の再生を目指す政策を強力に進めている。これは、米中対立、ウクライナやイスラエルの戦争、自国優先の経済、安全保障環境の厳しさ、そして大きく言うと、文明史的大転換としての脱成長経済へ向かう世界の中で、日本がどうしても維持・発展させなければならない産業として半導体産業を位置付けたことを示している。

図1 「第36回 長野実装フォーラム」のテキスト表紙

表1 「長野実装フォーラム」プログラム
しかし、過去30年間にわたるシェア50%から10%以下への激減の時代を経る中で、日本の技術、人材、資金力の低下は著しく、持てる力で日本半導体の再生に臨むとすれば、ほとんど最後の機会になるものと考えられる。
今回のフォーラムは、2023年9月にご逝去された傳田精一先生の追悼フォーラムとして企画された。傳田先生の日本半導体黎明期からのこの分野へのご貢献は周知の通りで、今回は、先生のご業績を日本半導体産業の発展とともに振り返りながら、日本半導体新時代への対応を考えることにした。
参加者数68名(オンライン参加20名)。
②講演の内容
冒頭、昨年の9月10日に92歳で亡くなられた傳田先生を偲び、参加者全員で1分間の黙祷から会が始まった(写真1)。最初に長野実装フォーラム(NJF)理事の橋本氏から2024年4月に富山市で開催された「ICEP2024」における傳田先生の追悼行事における報告をベースにNJFとの関わりなどを追加した資料による追悼講演があった(写真2)。
追悼講演の資料は、NJFのホームページの「傳田先生追悼ページ」へのリンク先 (https://x.gd/xP3Or)から閲覧・ダウンロードが可能になっている。

写真1 フォラーム開催冒頭 2023年9月10日に92歳でご逝去された傳田先生を偲び、参加者全員で1分間の黙祷。

写真2 橋本 薫氏による傳田精一先生の追悼講演
続いて日本半導体の全盛期を牽引された牧本次生氏から、「半導体を巡る最近の動向と日本の対応」と題して、豊富な経験をもとに、過去を振り返りながら今後の対応についての提言を頂戴した(写真3)。 世界の半導体業界の近年の動向から始まり、過去の日本の半導体産業の衰退の原因を分析し、今後の日本復興に必要な事柄を示していただいた。

写真3 牧本次生氏による講演
今、必要なのは新市場分野の開拓、特に少子高齢化で先行する日本においてニーズが高まる自動運転を含む高度なロボット分野への注力が必要であること、そのための高度な人材育成が重要であることが示された。
傳田先生と同じ時代を共に生きてこられた牧本氏からの示唆に富むご講演は、追悼フォーラムに相応しい講演であった。
NJF理事の西田氏からの、今注目されるホットな話題として、今後の日本半導体再生に必要なChipletについて、各社の最近の動向から課題まで広く深く分かりやすくまとめられた講演で理解が深まった。
FICTの田村氏からは、注目技術であるGlass基板について開発最前線からの技術の講演があった。
ガラスサブストレートの業界動向から始まり、そのTGV形成には、まだ多くの残された課題があることが示された。
しかしガラスサブストレートにはニーズがあることははっきりしており、課題は必ず解決されるものと期待される。
最後にNJF理事の横内氏から2025年4月15日から18日まで、長野市で開催される「ICEP2025」の紹介があった(図2)。

図2 横内 貴志男氏による「ICEP2025」開催の紹介
フォーラム会場にて故・傳田先生のご著書も展示された(写真4)。

写真4 フォーラム会場での故・傳田先生のご著書の展示
アンケート結果からも参加者の皆さんには満足のいくフォーラムになったものと思われる。
交流会にも多くの参加者が参加し、活発な議論と交流がさらに深まり、遅くまで話が弾んだ。
③ 長野実装フォーラムとは
「長野実装フォーラム」は、エレクトロニクス実装技術の発展を目指す団体で、実装技術に関する講演会(フォーラム)の開催、会社見学、技術情報の発行・配布、その他の活動を行っている。
特に実装技術を中核とする「ものづくり」を目標としたテーマを中心に取り上げている。
当フォーラムは講演を一方的に聞くだけでなく、質疑時間も長く取り、コーディネータが講演の後に、ポイントの確認や興味のある点をさらに明確にし、参加者の理解を深めるよう運営しており、分かりやすいと評判である。
フォーラムへは長野県内に留まらず、関東圏や広く全国から多くの参加者がある。
「長野実装フォーラム」は1999年7月に長野県工科短期大学校の半導体・実装技術研究会としてスタートし、2007年からは「長野実装フォーラム」として再スタート。
2009年からは「よくわかる実装技術講座」も開催し、2015年からは長野県テクノ財団(現、長野県産業振興機構)の支援を得て活動している。
代表理事は若林信一氏が務め、他に実装技術分野では世界的にも実力のある理事計14名が企画、運営などを担当している。
この「長野実装フォーラム」は、今後も継続的に開催予定であり、参加者全員で議論を交わしていきたい。
●野実装フォーラムのWEBサイト
- 会社名
- 長野実装フォーラム
- 所在地

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