3. 水中光無線通信
海底の調査では無人探査機が活躍しているが、探査機の操作を海上の船から行う必要があり、また探査結果はただちに船の本部へ送りたい。
そのような情報を伝える方法として、音波では通信速度が10kbpsと非常に遅く、動画などのデータ量の多い通信はできない。
電波では海水の導電性のため水中の減衰が激しく、長い距離を通信することができない。
そこで、光による無線通信の研究を行った。
水中の光の減衰が少ない青、緑、赤の高出力レーザーを用い、その光を点滅させることにより情報を伝達する。
海水中にはマリンスノーなどの懸濁物質がある場合、光の波長ごとに伝搬の減衰が異なるので、波長の異なるレーザ光でデータを取得した。
透明度の高い水中では青色、透明度が若干低い沿岸や近海では緑色、透明度が低い湾内などでは黄色または赤色を用いるのが良い。
受信には高感度の光電子増倍管(入射光が何万倍にも増幅される真空管)を用いた。
その結果、わずかしか光が届かない100m離れた距離でのLAN通信に成功し、20Mbps速度のデータ伝送ができた。
図5は水中光無線通信装置の写真で、表2は水中光無線通信装置の仕様である。
図5 水中光無線通信装置の写真(JAMSTEC提供)
表2 水中光無線通信装置の仕様(JAMSTEC提供)
なお、この研究には(株)島津製作所及びエス・エー・エス(株)の協力を得た。
1.水中光無線通信の実地試験
昨年7月、駿河湾の水深700?800m付近において試験を行った。
図6の「かいこう」のランチャーとビークルの距離を徐々に空けてゆき、120mまで離れた場合で20Mbps速度のデータ転送に成功した。
図6 光無線通信の実験
2.水中光無線通信の今後の活用
今回得られた100m以上も離れた移動体同士の水中光無線通信は、世界初の実用的な通信であり、水中のLAN通信が可能になったことから、水中光Wi−Fiや、有人潜水船からスマートフォンで水中の機器を操作することも可能となった。
さらに、海洋観測をインターネットへ接続してIoTに使えることになり、海底資源探索やダイビング、港湾土木作業の水中作業など、広く活用できると期待される。
また、従来は考えられなかった空中のドローンと水中機器が直接通信することもできる。これらの様子を図7に示す。
図7 将来的な水中光無線通信(JAMSTECの提供)
4. まとめ
今月は、音波による広い範囲の海底探査に有効な合成開口ソナー技術と、レーザ光を利用した水中の高速情報通信技術を紹介した。
この2つの技術は、今後の海底探査にとって極めて有用な基礎的な技術であり、海洋に関する産業の発展に寄与し、我々の生活も豊かにしてくれるものと思われる。
来月からは、海底での熱水噴出や環境問題など、具体的なテーマについての研究を紹介する予定である。
乞うご期待。
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