テクニカルレポート

2019/11/15 / テクニカルレポート

さまざまな研究所を巡る⑪

〜海洋研究開発機構(その4)〜

 厚木エレクトロニクス/加藤 俊夫 氏

 

 

4. 地震予測

 

1.プレートテクトニクス


 大きな地震が発生する原因の一つとして、海洋地殻が大陸地殻に潜り込むためであるというプレートテクトニクス理論は多くの皆様にお馴染みのことと思う。

 念のため筆者の理解を図示したのが図3である。

 

図3 海洋地殻の生成とその後の動き

 

 

 図3の右側に示したように、海洋地殻の弱い部分にマントルが上昇して海嶺を形成する。

 マントルは冷えると海洋地殻になって、図3のように左右に移動を始める。

 途中でマントルが噴火して火山ができる場合もあり、ハワイ諸島のように火山が一定期間毎に起こると連続した列島になる。

 移動してきた海洋地殻は大陸地殻と衝突し、大陸地殻の下に潜り込む。

 この潜り込む過程で歪が発生し、歪が耐えきれなくなった時に大きな地震が発生する。

 海嶺の両側に海洋地殻ができるという証拠は、1968年に始まった深海掘削計画で得られたデータが面白い。

 図4のように、海嶺の左右の海底の年代を測定すると、古い年代ほど海嶺から遠いことが分かった。

 

図4 大西洋中央海嶺から、海底が移動した距離と年代。海嶺から海洋地殻が生成され、左右に移動する様子が分かる

 

 

 

すなわち、海嶺で発生した海洋地殻がどんどんと遠ざかっていたわけである。

 

 

2.2011年東北地方太平洋沖地震後の、余効変動の大規模数値シミュレーション

 

 2011年東北地方太平洋沖地震は、太平洋プレートが北米プレートに沈み込む日本海溝において発生した海溝型地震である。

 この地震が東北地方周辺領域の岩盤にもたらした大きな応力を解放するための継続的なプレートの変動(余効変動)が、地震後から7年以上たった現在も続いている。

 余効変動は、ある程度規模の大きな地震発生後に顕在化する一般的な現象で、余効変動がもたらす応力を解放するためのメカニズムはいくつか指摘されており、特に、
 

 ① マントルを構成する岩石が長時間かけて流動することによる解放
 

 ② 断層面のうち、地震を起こした部分の周囲がゆっくりとすべること(余効すべり)による解放のどちらかの影響が大きいといわれている。

 
 2011年の地震後の余効変動は、太平洋プレート下の上部マントルの高速な流動によるものだと指摘されていたが、その発生要因についてははっきりと分っていなかった。

 JAMSTECは、東京大学、理化学研究所及び南カリフォルニア大学と共同で、地震後2.8年間の余効変動の数値シミュレーションを行った(図5)。

 

図5 2011年東北地方太平洋沖地震後2.8年間の計算変位(資料はJAMSTECのご提供による)

 

 

 

 マントルと断層の動きを表現する実験則を組み込んで、スーパーコンピュータを用いた大規模計算を行った結果、観測データとよく一致するものであったことから、本シミュレーションによって、マントル流動と摩擦の実験則が、余効変動の発生メカニズムをよく説明するとした新しい説を提唱した。

 
 余効変動の解明は、私たちが生活する土地が今後どのように変化しうるのかを考える上で重要で、都市計画や防災対策の観点からも欠かすことはできない。

 本成果では水平方向の観測変位とよく一致するシミュレーション結果を得ることができたが、人々の生活により影響を与える鉛直方向の観測変位(沈降・隆起)との一致に対しては、まだ課題を残している。

 2011年東北地方太平洋沖地震がどのような地震時すべり量分布を伴っていたかの仮定を見直すことで、数値シミュレーションを改善していきたいと考えている。

 本研究の成果は、沈み込み帯地震における余効変動が実験鉱物・岩石学的知見によって一般的に理解できる可能性を示唆するとともに、地震準備過程・推移予測を考える上で、マントル流動に関する実験則を考慮に入れるべき場合があることも同時に示唆している。

 

 

3.南海トラフ

 

 日本列島の周りは、図6のように4つのプレートに囲まれている。

 

図6 日本と取り巻くプレートと海溝

 

 

この中で、太平洋プレートと北米プレートの境界の日本海溝で起こったのが2011年東北地方太平洋沖地震であった。

 次に心配されているのが、駿河湾から九州に至るフィリピンプレートとユーラシアプレートの衝突による南海地震で、ここ30年間に起こる確率が70~80%と言われ日本中に衝撃を与えた。

 ここは南海トラフと呼ばれているが、トラフとは海底が浅いだけでの海溝の一種で、フィリピンプレートの沈み込みが起こっている。

 なお、北米プレートとユーラシアプレートの間では、大きな沈み込みがなく、巨大地震は少ないと考えられている。

 

 

4.地球深部掘削船「ちきゅう」

 

 2005年7月に完成した「ちきゅう」は、 海底下7000mの世界最高の掘削能力を持つ地球深部探査船である(図7)。

 


図7 海底下深部の掘削が可能な「ちきゅう」(資料はJAMSTECのご提供による)

 

 

この船の完成によって、今まで人類が到達できなかったマントルや 巨大地震発生帯への掘削が可能になった。

 「ちきゅう」は科学史上初めて巨大地震の震源まで掘り進み、そこを直接観察して地震発生メカニズムを解明するため掘った穴に観測装置を設置し、地震発生と同時にその情報を陸上へすばやく伝える仕組みを作る。

 将来、この地震観測ネットワークは都市防災に役立つことが期待されている。

 

 

5.南海トラフ地震発生帯掘削計画

 

 南海トラフでの巨大地震の発生が危惧されている。

 JAMSTECでは南海トラフでの巨大地震メカニズムの解明に努力している。

 本研究航海では、紀伊半島沖熊野灘に位置する図8のC0002地点などにおいて、世界初の挑戦としてプレート境界断層(巨大地震発生時の震源断層)及びその上部の地層を伝わる弾性波速度が高速になる層(巨大地震を引き起こすひずみエネルギーの一部が蓄積されていると考えられる領域)を目指すライザー掘削に取組んだ。

 


図8 南海トラフ海底断面図と、地震発生帯掘削計画において掘削した地点と、C0002地点での掘削深さ(資料はJAMSTECのご提供による)

 

 

  ライザー掘削とは、海底に設置した噴出防止装置と船上とをパイプでつなぎ、その中にドリルパイプを降ろして掘削する方法である。

 「ちきゅう」船上から掘削孔内に掘削流体(泥水)を送り込み、パイプを通して船上まで循環させながら掘進する方法である。


 本研究航海においてC0002地点で、海洋科学掘削として世界最深となる海底下深度3262m(水深1939m)まで到達するとともに、海底下深度2836mから約2.5mのコア試料(柱状の地質試料)を採取した(図9の写真)。

 

図9 C0002地点において海洋科学掘削として世界最深となる海底下深度から採取されたコア試料

(資料はJAMSTECのご提供による)

 

 

 これらのデータ及び試料は、南海トラフにおける巨大地震・津波の発生メカニズムの研究に用いられる。


 その他の地点でも、海底下の地層の物性・状態のデータを取得し、上盤プレート先端部とプレート境界断層の性質が明らかになることで、巨大地震発生時の挙動とスロー地震との関係を理解することが期待される。

 その他の採取したコア試料を用いて南海トラフにおけるプレートの沈み込みに伴う地震発生帯の形成プロセスの解明を目指している。(詳細については、http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20190329/

 

 

 

5. まとめ

 

 JAMSTECでは、海洋に関する各種の研究や調査を行っておられるが、台風や地震のような国民生活に重大な災害をもたらすテーマについても、国の他の機関と協力して多くの成果を上げておられる。

 ただし、これらの問題の発生メカニズムの解明はまだまだ十分とはいえないわけであり、今後の一層のご努力を期待したい。

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