テクニカルレポート

2020/12/11 / テクニカルレポート

そろそろ本当の公差設計の話をしよう!

〜車載電装品から学ぶ、“ゼロ・ディフェクト”実現のための公差解析(後編)〜

Nakadeメソッド研究所  中出 義幸 氏

 

 

1. はじめに

 

 本稿は、公差設計をする前にものづくりを考慮した、設計者のスキルアップに直結する構造設計について、

 

① 公差設計をどのようにしたらよいのか

 

② 設計基準、金型構造、樹脂成型、材料特性を考慮した設計の大切さ

を、筆者の実体験から設計の勘所としてお伝えするものである。

 前回(本誌2020年11月号)は「前編」として、「現状の課題」「公差設計と公差解析」「公差値を決める設計プロセス」「金型構造と射出成型機」について論じた。 今回はその続きである。

 

 

 

2. 樹脂成形での配慮すべき設計公差ポイント

 

1.成形不具合とその対策形状

 

 

(1)厚肉による樹脂の縮み:ヒケ、ソリ(図1)

 

図1 ヒケ、ソリ

 

 

 ヒケ、ソリ対策は、均肉設計と肉盗み形状の最適化である。

 均肉にすることで、成形サイクルも短くなり、公差の精度が上がる(図2)。

 

図2 肉盗み

 

 

(2)テーパ形状
 

 肉厚の変化に対してテーパを設けることで段差部に発生する成形歪み、ヒケが緩和できる(図3)。

 

図3 テーパ

 

 

(3)リブ追加によるソリ防止

 

 リブを追加することによって、ソリを防止することができる(図4)。

 

図4 リブ

 

 

(4)R付け:応力緩和

 

 シャープな角は、①強度低下になる、②応力集中、③成形時の樹脂の流れが悪い、などの問題がある。

 その対策として、Rをつけることで、流動性の良化の他、手にやさしいという効果もある(図5)。

 

図5 R付け

 

 

(5)リブ厚みの最適化

 

 ヒケを防ぐためには、リブの厚みは板厚の半分以下にするのが理想である(図6)。

 

図6 リブ板厚 

 

 

 公差を考慮した樹脂別推奨肉厚を、表1に示す。

 

表1 公差を考慮した樹脂別推奨肉厚 

 

 

 数値は一般的な指針であり、部品形状や成形方法によって異なる。

 

 

(6)抜き勾配

 

 抜き勾配を設けることで、金型からの離型がスムーズになり、離型時の傷や、成形品のキャビ取られもなくなる。

 より良い成形品を入手するためには必要である(図7)。

 

図7 抜き勾配(出典:プロトラブズ(同)https://www.protolabs.co.jp/)

 

 

2.公差上配慮すべき金型設計内容

 

(1)コア・キャビティ設計

 

 金型は成形品を囲んで凸部と凹部に分割される。分割面がパーティングラインになる。

 

・凸部はコア(雄型)

 

・凹部はキャビティ(雌型)

 

 

 キャビティは、一般的に成形品の外観を表す形状となり、内側の見えない部分がコアになる。

 キャビティは、金型から成形品が取り出しやすいように傾斜(抜き勾配)をつける。

 金型が開いた瞬間に、成形品はコア側に取られ、キャビティから離れることになる。

 したがって、射出成形機へ金型を取り付ける際は必ずキャビティが固定側となり、コアが可動側となる(図8)。

 

図8 コア・キャビティの構造

 

 

(2)深い切削への対処

 

 抜き勾配を付けることで、深さのある部品がスムーズに離形できる。

 目安はパーティングライン(コア・キャビティの合せ面)から深さ30mmごとに1°の抜き勾配を設けるようにすることである。

 

 

(3)シボ加工表面仕上げ

 

 抜き勾配は、標準で3°以上、中程度は5°以上とる。

 

 

(4)スライド構造金型

 

 スライド構造は、金型部品をスライドさせることでアンダーカット(※1)形状を製作できる(図9)。

 

図9 金型スライド

 

 

(※1)アンダーカット…成形品を金型から取出すとき、そのままの状態では離型できない凸形状や凹形状。

 

 

(5)2方向抜き構造の金型

 

(4)に示したスライド構造を使用しないで、すり合わせ形状で低コスト化する構造である。

 すり合わせ面の角度は、3°以上を推奨する(図10)。

 

図10 上下抜き金型付き当て

 

 

(6)バンプオフ方式離型(無理抜き)

 

 バンプオフとは、小さなアンダーカットのことで、スライドを使用せずに2方向抜き金型からスムーズに離型ができる(図11)。

 

図11 バンプオフ 

 

 

 軽微なアンダーカットであれば、バンプオフで対応可能になる。

 

 

(7)ゲートの位置

 

 ゲートの肉厚が薄いと、樹脂の充填が悪くなり、ゲートカットの際には成形品が破損する可能性がある。

 ⇒ゲート位置には十分な肉厚が必要である(図12)。

 

図12 ゲートカット(出典:プロトラブズ(同)https://www.protolabs.co.jp/)

 

 

(8)金型寸法を決める際の注意点

 

 実際の成形では、部品形状によって予想以上に収縮したり、逆に収縮しなかったりする。

 成形条件である程度公差をコントロールできるが限界があり、場合によっては、金型を修正しなければならないことが生じる。

 金型は削るのは簡単だが、肉を盛るのは困難である。

 ⇒金型を作り替えなければならない。

 従って、削り方向で金型寸法を調整できるように、

 

・キャビティ(凹)の場合は、小さな値の収縮率にする。

 

・コア(凸)の場合は大きい値の収縮率を設定する

 

 

 必要がある(図13)。

 

図13 コア、キャビティ

 

 

 狙った寸法が得られなかった場合は、金型を少しずつ削って調整することを行う。

 寸法精度を要求する部分についても同様に金型を削って調整する。

 なお、収縮率は同じ材質であっても、肉厚、壁厚、部位によって縮み⽅が異なるので注意が必要である(出典:MONOWEB https://d-engineer.com/mold/seikeisyuusyuku.html

 

 

3.設計者が一番知りたいこと⇒公差値設定のポイント!

 

①.一般的な最小公差(精度)は、± 0.05

 

②.寸法が大きくなるにしたがって、公差も大きくなる!

 

 

 例えばABSやPC(ポリカーボネート)などの比較的収縮率が小さい樹脂では、10mmあたり0.02mmで、POM(ポリアセタール)やPPなどの収縮率が大きい樹脂では、10mmあたり、0.04mmが、最小公差±0.05に追加されると考えるとよい(出典:プロトラブズ(同) 図解樹脂部品設計 https://www.protolabs.co.jp

 

 

 

3. 公差設計の勘所~設計者として押さえておきたいノウハウ

 

①公差設計は、積上げ公差で行え!

 

②K・S・D=(経験とセンスと度胸)が大事!

 

 

 私の経験では、一般的にいわれている設計成立のために公差を厳しくすることはしない! 設計者はものづくりを最大限に考慮した、安定したものづくりができる形状と、金型調整可能な構造と個所を図面で現場に示すことである! さらに、設計者は現地に行って金型を見て、成形品を確認してものづくり側と話し合って、設計仕様に反映させることが大切である。

 安定したものづくり形状とは、

 

①均肉設計

 

②上下、左右対称形状

 

③コーナーR付け

 

④適度な抜き勾配形状

である。

 以下に、ノウハウ事例としてスイッチ(図14)を例にとって解説する。

 ここで必要となる設計は、「プッシュボタン構造設計」「プリント基板の位置決め設計」「樹脂への板金圧入設計」「プッシュ操作スイッチ構造設計」である。

 

図14 スイッチ外観

 

 

1.プッシュボタン構造設計……凹と凸形状嵌合(図15)

 

図15 スイッチ分解図

 

 

 機能:スムーズにボタンが上下に動くこと。

 手段:ボタンの凸と本体の凹部の勘合で構成、凹凸のスキ間は最悪でも、0.02確保する

 

・ボタン凸寸法:1.50 0/-0.04

 

・本体の凹部寸法:1.52 +0.04/0

 ⇒ 金型加工を考えて片側公差を両側公差表示に変換。

 

・ボタン凸寸法:1.48±0.02(1.46~1.50)

 

・本体の凹寸法:1.54±0.02(1.52~1.56)

 なお、図面には設計者の意図を片側公差で補助で記入する。

 ⇒( )寸法で片側公差を記載するとよい。

 

 

 場合によっては、金型の抜きテーパも必要。

 さらに、凸、凹のセンターずれも考慮が必要だが(図16)、ここでは割愛する。

 

図16 センターのずれ

 

 

(1)凹凸の隙間公差計算

 

①積上げ法

 

凹凸隙間=(1.54-1.48)±0.02±0.02=0.06±0.040(0.02~0.10)

 

②確率法(2乗和平方根)

 

凹凸隙間=(1.54-1.48)±√0.022+0.022=0.06±0.0282(0.032~0.088)
積上げ公差と確率公差の差=0.040-0.0282=0.0118

 

 結果…確率法は積上げ法に対して、0.0118隙間を詰めることができる。

 ただし、正規分布していることと、0.3%の干渉品が出る。

 さらに、公差計算の因子が2つしかないので確率法での信ぴょう性に欠ける。

 

 

(2)設計ポイント:凹と凸形状の嵌合

 

 実際には、ボタン凸部の寸法を固定して、本体側の凹部形状を作る金型の幅を最初は大きくしておいて、金型を微調整で削って、本体成型品の凹幅を狭くすることで、ボタン凸とのがたつきを抑え、ボタンをスムーズに上下させることができる(図17)。

 

図17 修正前後勘合図

 

 

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