ブックタイトルメカトロニクス6月号2021年

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概要

メカトロニクス6月号2021年

MECHATRONICS 2021.6 45経営とともに一大産地が形成され、100年以上の歴史を刻んでいる。明治時代に上下水道が整備され始めたことにより、様々なバルブが作られてインフラ整備が実施された。 現在、彦根バルブは27社のブランドメーカーとそれを支える70?80 社からなる関連企業で業界を構成し、業界で働く従業員は1,500 人にのぼり、滋賀県内最大の地場産業として成長してきた。 彦根において創業した地場企業から構成され、域外から移転してきた企業は、ほとんどないという。バルブメーカーは全国にあるが、これだけの企業が集積する産地は全国唯一であり、最大規模のバルブ集積地になっている(写真3)。図3 バルブの輸入額推移(財務省)図2 バルブの輸出額推移(財務省)図1 バルブの出荷額推移(経済産業省)写真3 滋賀県下最大のバルブ集積地2)表2 日本のバルブの輸出入国のTop5輸出先相手国輸入先相手国2014 年億円中国1,116 中国755米国980 米国458韓国424 ベトナム369タイ297 ドイツ151台湾167 韓国149出所日本バルブ工業会輸出先相手国輸入先相手国2019 年億円中国1,676 中国754米国852 米国490韓国471 ベトナム357タイ303 ドイツ190台湾193 韓国145出所日本バルブ工業会 そして時代のニーズに応じて、水道用、産業用、船舶用バルブなどの製造を行い、自社ブランド製品で地位を築いてきている。 厚生労働省は水道水の安全性を高めるため、水道施設に使用される機器から溶出する物質の溶出基準を強化したことを受けて彦根バルブではバルブの材料として、鉛を含まない銅合金鋳物「ビワライト」を開発した。 関西大学、滋賀県東北部工業技術センターと共同で開発を行い、約7 年をかけて、目標通りの試作品が完成し、製法特許も取得した。 高価で希少な合金化元素を使用しないことでコストアップを抑え、鋳造製が良く、リサイクルが可能で、健康面の安全性を向上することができるという特性をもっている。 鉛フリーの銅合金素材「ビワライト」は、滋賀バルブ協同組合および滋賀県が特許をもつ新素材であり、彦根発のバルブ用素材として世に出たものである。2) この地区での生産高規模は254億円(2017年)にのぼり、材質も、多くが鋳鉄やダクタイル製で、ステンレス・鋳鋼・アルミ製なども手がけ、あらゆるバルブニーズに対応できる生産体制を確立している。 さらに国際化に対応し、多くのメーカーが素材や部品の海外調達を行っており、現在、マレーシア、中国、フィリピン、ベトナムに6社が工場進出している。4. 新たなバルブ市場 また、ガソリン車から新電動車の動きがあり、既に燃料電池車の普及とともに建設されている水素ステーション向けの防爆バルブ開発などが、新規分野の応用分野であり、市場開拓に取り組んでいるメーカーもある。次世代の社会基盤構築においてもバルブは安全・安心を確保する上での重要機器としての役割をもつとも言える。 バルブの自動化および制御技術の開発は、リモート処理が可能にするもので、期待される産業用バルブ市場でもある。自動バルブにより、石油・化学産業、ガス産業、発電所の危険な遠隔環境に適用ができ、さらなる発展が期待される。<参考資料>1)日本バルブ工業会編、“バルブ工業概況調査報告書”2)広報ひこね“バルブの生産地” 2009-02-01