ブックタイトルメカトロニクス3月2021年

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概要

メカトロニクス3月2021年

44 MECHATRONICS 2021.3 日本で生産地から消費地へのモノの流れがある程度確立されたのが江戸時代で、利根川などの水運が発達し、建築資材である木材や農産物は川の流れに乗って江戸まで運ばれ、手段は舟運であった。 その後、日本橋を起点にして、旧東海道(国道1 号線)、日光街道・奥州街道(国道4号線)、水戸街道(国道6 号線)、千葉街道(国道14 号線)、中山道(国道17号線)、甲州街道(国道20号線)などが今や日本の物流の大動脈となっている(写真1)。これらの道路のインフラが整備されたことにより、トラック輸送へと変わっていった。 コロナ禍で巣籠生活が余儀なくされ、外出してのショッピングもでき難くなってきている。その結果、消費者のライフスタイルは変化し、通信販売の利用へとシフトし、宅配便取扱量が急増してきた。 そして必然的に物流に対するニーズも変わってきている。将来この傾向はさらに進むことが予想され、それに伴って、輸送の小口化・多頻度化による輸送効率の低下が懸念される。今回、このような状況下の中での物流搬送の市場動向を紹介する。1. 市場背景 図1に示すように通信販売の伸びに伴い宅配便取扱数が急増しており、43.1 億個(2018 年)となっている。2020 年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、外出を自粛するなどしたため、商品の調達は通信販売に頼ったと推定され、宅配便の取扱量は急増したものと推定される。 急増している中、年末のピーク期に遅配が発生するなど企業間輸送も含めて特定期間に需要が集中する場合に輸送ニーズに対応できないような、これまでに見られなかった状況が生じている。 また、時間的な制約が厳しくなる一方で、時間指定、代金収受、届け先での附帯作業などの物流に附帯するサービスの範囲は拡大しているといった背景もある。 欧米と比較すると通信販売の利用は低いものの今後、利用率が上がり個人向け輸送ニーズが増加した場合には、ピーク時等の対応が更に困難となる恐れが横たわる。 さらに物流は、月、曜日、時間帯等による需要の差が大きく、ピーク需要に対応して設備・人員を用意するとオフピーク時の稼働率が下がり効率性が損なわれることとなる。 生産活動等には、当然ながら波動があることから需要にピークが存在すること自体は避けられない面があるものの、効率性を向上させる上では物流のピークとオフピークとの差を極力小さくしていくことが大きな課題でもある。 また、積載効率も向上させる必要があり、単独の事業者での取り組みには限界がある。事業者間で連携して輸送・配送の効率化やピークの平準化等の対応を行い、これらのムラやムダを減らすことにより、サプライチェーン全体の効率化・価値創造に資するとともにそれ自体が高い付加価値を生み出す物流への変革を図る必要があるとも指摘されている。 政府は「総合物流施策推進プログラム」を掲げ、次のような6 項目に重点化して業界の改革の後押ししている。① サプライチェーン効率化② 物流の透明化③ インフラの機能強化④ 災害対応⑤ IoT/AIなどの新技術の活用⑥ 人材育成 工場から物流倉庫までの「幹線輸送」、そして物流倉庫からそれぞれの小売店舗までの「支線配送」という一連の流れを見える化し、全体を最適化することが重要となってきている。 輸送・配送の中継拠点となる物流倉庫では、マテハンメーカーの果たす役割が大きくなる。バラバラに物流システム機器を入れるのではなく、総合的な観点から見て、有機的に効率よく機能しているかが重要である。いずれにしても自動化・機械化を取り入れて物流事業の労働生産性を上げる必要がある。2. 物流システム機器 少子高齢化が進むわが国において、高いサービスレベルの物流を低コストかつ高品質で実現し続けるためには、物流現場の自動化や機械化が必要で、物流システム機器には自動倉庫、台車、仕分機、コンベヤといったマテハン機器が、その中心的な役割を担っている。物流システム機器の種類は表1に示す機器が対象となっている。1) 公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会では、一般社団法人日本物流システム機器協会・統計委員会の協力を得て、物流システム機器の統計資料を整備しており、物流システム機器の15 年間の市場推移を示すと図2 のようになる。2018 年度で5,859億円の市場規模となっている。 「物流」は物の流れを止めることなく、日常生活の第8回 物流搬送の市場動向市場の生産統計とそのヒストリーちょっと気になる連 載写真1 日本橋にある日本国道路元標図1 宅配便の取扱量の推移