ブックタイトルメカトロニクス12月2020年
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メカトロニクス12月2020年
42 MECHATRONICS 2020.12第30回 <微小チップ部品の登場で話題商品が変わる> プリント配線板に多くの受動部品や半導体、接続部品、変換部品等を搭載し、筐体の中に組みこんで電子機器は完成品となる。 前回は、能動部品である“ 半導体”について紹介し、その“半導体” のお陰で話題商品ができ、さらなる話題商品を作るために“半導体”の進歩を促進したことも言及した。 今回は電子部品の分類では「受動部品」となる“コンデンサ”、“抵抗”、“インダクタ”などの部品に焦点を当てて紹介する。 やはり、受動部品も話題商品を作る上で大きな役割を担うことになる。電子機器は「軽薄短小」をスローガンに電子機器を如何にして小型化、軽量化、薄型化を達成するかに腐心した。その目的達成のために受動部品は機能を落とさず限りなく小さく、薄くするのを目標として開発された。その背景から先ず事例を紹介することにする。1. 電子機器の変遷 電子機器には、民生用機器と産業用機器があり、市場を牽引するのは、生産量の多い民生用電子機器であり、日本の市場を長く牽引したのは民生機器の“カラーテレビ”であった。 元々、米国のRCAが商品化し、多くの日本の電機メーカーがRCAから技術導入して国産化したものであった。当時のカラーテレビはブラウン管を使ったタイプで、奥行きがあり、プリント配線板も1台に1/12~1/9m2の大きさに相当する片面紙フェノールプリント配線板が使用されていた。 奥行きのあるブラウン管の大きさのために実装するスペースは十分にあり、使用する部品のサイズはそれ程、気にする必要もなく、写真1に示すように1.6mmの板厚の片面プリント配線板に大きな挿入タイプの部品が搭載されていた。 そしてポスト・カラーテレビで登場したのが据置型VTRで、これもカラーテレビの下に置くためにサイズをあまり気にする必要がなかった。従って、これらに搭載する部品も当時は、サイズをそれ程気にする必要もなかった。 ところが、VTRはテレビの番組を録画するだけではなく、カメラ一体型VTRで撮影してそれを据置VTRで再生し、テレビに映して視聴するのが始まった。その結果、持ち運びをして使用するカメラ一体型VTRには、小型軽量化タイプが要望される背景ができた。 日本は秋になれば子供の運動会があり、子供の活躍振りをカメラ一体型VTRで撮影するのが一般化した。しかし、当時は肩に担いでの撮影であった。特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光それ程、大きなカメラ一体型VTRであった。 そこで登場したのがカメラ一体型VTRを如何に小型化・軽量化するかという強い市場からの要望に応えることであった。搭載する部品の小型化・軽量化・薄型化などの取り組みが始まった。 一方、ラジオに目を向けると半導体の進歩とともに受動部品も小型化・薄型化へと進展していき、小型ラジオを生産することが可能となってきた。中には、写真2に示すようにカードサイズのラジオも登場した。 このようなサイズが達成できたのは、半導体の高集積化と受動部品の小型化・薄型化によるものであった。 部品を限りなく薄く小さくし、中にはチップ部品にして、小型機器に組み込むことが検討された。そしてチップ部品を自動装着する自動実装機も開発された。 樹脂系基板にチップ部品の表面実装工法を世界で最初に採用し、携帯ラジオに搭載したのが最初である。 松下電器が1977 年商品化した“Dr. Pepper”という小型ラジオであった。パナソニックのデザインの歴史を語る上で、図1のように紹介されている。 YM 工法とは、表面実装技術に関わった薮崎俊一(Yabusaki Shunichi)氏と三木弼一(MikiSukeichi)氏の頭文字から由来している。 薮崎氏は、当時、ラジオ事業部の責任者で、三木氏は無線研究所の部品材料の開発者であったそうで、当時は、糸はんだで挿入部品が主流の時代にプリント配線板にはんだペースト、スクリーン印刷、そしてチップ部品を開発して、表面実装技術基板の開発事業化を成し遂げ薄型ラジオに展開したのである。表面実装技術の日本での始まりである。 この薄型ラジオはデザインにも優れ、薄型を活かして胸ポケットに入れることができ、筆者の登山の必携の道具の一つとなっている。電池込みで重さも135gと軽量で、もう一つの魅力でもある。 発売されて既に43年も経過するが現在でもデザインに違和感なく、まだ、有難いことにラジオとして動作し健在である。2. 電子部品の分類 半導体の高集積化とともに受動部品でも小型化・薄型化の進展に伴って、ポータブル機器の商品化に大きく影響を及ぼすことになる。 電子部品には、大別すると“ 能動部品”、“ 受動部品”、“ 接続部品”、“ 変換部品”、“ その他の電子部品”の品目となり、各々の分野で小型化・薄型化の熾烈な競争が進展していった。 受動部品は構造が単純で、しかも小さく目立たな表1 日本の受動部品業界の強さの秘訣項 目内 容1 材料の内製化各コンデンサメーカーは、チタン酸バリウムは内製化して製法のノウハウとして自社に閉じ込めている2 製造装置の囲い込み製品ごとにキーとなる工程には独自の製造装置を使い、内作または装置メーカーに特注し、装置メーカーにはレシピを漏らさない3 不断の技術革新不断に技術を進化させていくことで競合他社を振り切る図1 小型ラジオ“Dr. Pepper”の紹介文ジオペッパーラジオ R-012松下電器産業(現 パナソニック)YM工法という新しいICチップ取付方法、薄型スピーカー、薄型バリコンの開発によって、厚さ12.7mmという画期的な薄さを実現したラジオ。高さ 127mm、幅71mmというサイズは、シャツの胸ポケットにも収まる。デザインは極力シンプルにまとめ、薄さ、コンパクトさの魅力をストレートに伝えることに徹した。操作部品はポケットに入れたままでも操作できるように、全て上部にレイアウトしている。技術の先進性を象徴するメタリックなシルバーに梨地処理を施すことで、人にフィットするソフトさをさりげなく感じさせている。身に着ける感覚で携帯できるオーディオ機器の先がけといえる製品。発売と同時に大きな話題となり、「軽薄短小」で付加価値を創造する商品デザインの先駆けとなった。1)1977 年グッドデザイン賞、1996 年グッドデザイン・スーパーコレクション受賞2)写真2 カードラジオ(カシオ計算機/1984年)写真1 カラーテレビ用実装基板(東芝)