ブックタイトルメカトロニクス5月号2019年
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メカトロニクス5月号2019年
MECHATRONICS 2019.5 45表1 日本の電子回路基板業界の歩み年度内容1950年輸入銅箔による紙フェノール銅張積層板を生産1953年東京芝浦電気(現 東芝)が国産初の輸入銅箔(35、70μm)による紙フェノール銅張積層板を開発し、ラジオ受信機用の片面板プリント配線板を生産し東京通信工業に納入する1954年江戸川化学(現 三菱ガス化学)が銅張積層板の製造を開始1955年日本でフォトエッチング法によるプリント配線板の本格的な研究が始まり、フォトエッチング法以外に、①メタリコン法、②ゴム版法、③謄写版法(現在のスクリーン印刷法)、④スタンプ法、⑤オフセット法、⑥ロールぺン法、⑦ダイスタンプ法、⑧写し絵法、⑨転写印刷法、⑩腐食法、⑪刻印法、⑫真空法、⑬浸漬法、⑭刷毛塗り法、などが試みられ、輸入銅箔による銅張積層板の試作が始まる東京芝浦電気(現 東芝)、日立製作所が銅張積層板の製造を開始する1956年音響製品向けに紙フェノール銅張積層板の国産化が本格化するゴム版法によるプリント配線板の生産を開始する1957年銅張積層板用銅箔の国産化が始まる日本で初めてトランジスタ式計算機にプリント配線板を採用するテレビの受像回路にプリント配線板を導入1958年東京芝浦電気が「プリント配線用銅貼張積層板の研究と実施」で第5 回 大河内(技術賞)受賞福田金属箔粉工業が長尺電解銅箔(ロール)の製造を開始する1959年接着剤付銅箔を国産化し、紙フェノール銅張積層板(XXXP、XXP、XP、XPC)に適用する片面プリント配線板の生産が増加するテトロン布エポキシ樹脂積層板を開発する1960年ガラスエポキシ銅張積層板(G-10)の生産が行われ,両面プリント配線板も製造が始まるネームプレート製造技術をベースにプリント配線板業界への参入企業が増える1962年片面プリント配線板がトランジスタラジオの普及で需要が急増するガラスエポキシ多層配線板の生産を開始する日本プリント回路工業会(JPCA)が6月16日に杉並法人会館で創立総会を開催(8 月に会報第1号が発刊される)1963年日本アビオトロニクスが米国ヒューズ航空社から技術導入してスルーホール方式の多層板の生産体制にはいる東京芝浦電気が銅箔処理で大河内賞を受賞印刷回路用銅張積層板のJIS C-6931を制定公布1964年電子交換機の本格的な検討が開始される両面プリント配線板の需要分野が徐々に拡大し始める1965年藤倉電線がダイスタンプ法によるプリント配線板を製造する両面プリント配線板の需要が増加傾向になる多層プリント配線板をコンピューターに採用するプリント回路ジャーナル誌が創刊される(9月5日)1965年頃ガラスエポキシ銅張積層板(FR-4、FR-5)の生産を開始するガラスエポキシ銅張積層板(G-10)のプリプレグの実用化する年度内容1966年紙フェノール銅張積層板の生産量が128 万m2/年となる1967年海外からの印刷配線板用生産設備輸入が急増する銅張積層板が史上初の214 万m2に達成する(そのうち約10 %がガラスエポキシ銅張積層板)ポリイミドペースフィルム基板を開発(Role to Role方式)プリント配線板の売上規模は全国で100 億円となる1969年神奈川県川崎地区のプリント配線板企業が中心となって親睦団体の「如月会」を設立東京芝浦電気がガラスポリイミド銅張積層板を実用化するプリント配線板の専業メーカーが操業を開始する1969年頃内層回路入り銅張積層板(G-10)を実用化するプリント配線板分野へ新会社の参入が相次ぐ日本で消費されていたガラスエポキシ銅張積層板の約75% が米国製であった1970年内層回路入り銅張積層板(FR-4)を実用化するプリント配線板500億円産業となるエポキシ系コンポジッド銅張積層板(CEM-3)を実用化1974年日立化成が溶剤型ドライフィルムを実用化1978年日立化成がアルカリ現像型ドライフィルムを実用化1981年松下電工が金属ベース配線板を実用化1986年山梨アビオニクスがフレックスリジッド配線板を実用化東芝ケミカルが真空成形の製造技を術確立して6 層板内層回路入り銅張積層板の製造を開始1987年富士通、「高密度42 層プリント配線板の開発と量産化」 第34 回 大河内賞(技術賞)受賞プリント回路世界大会が東京で開催1988年松下電工、コンポジット銅張積層板用連続成形で製造開始1989年日本IBM がビルドアップ多層プリント配線板SLC を開発帝人がアラミド繊維銅張積層板を実用化沖電線が多層FPC を実用化1995年東芝ケミカルがハロゲンフリーCEM-3 を実用化1997年東芝ケミカルがPPE 銅張積層板の実用化東芝ケミカルがハロゲンフリーガラスエポキシ銅張積層板(FR-4)を実用化2003年利昌工業がハロゲンフリー耐熱ガラスエポキシ銅張積層板(Tg=180℃)を実用化2004年デンソーが半導体パッケージ用基板を一括積層方式で生産開始2009年利昌工業がナノテクを用いたハロゲンフリー高弾性低膨張銅張積層板を実用化2011年京セラが携帯電話のメインボードに部品内蔵基板が採用2012年デンソーが超高多層治具基板を一括積層方式で実用化(全層IVH で129 層)2014年利昌工業が高耐熱低膨張銅張積層板(Tg=300℃)を実用化2017年村田製作所がLCP を使った基板を実用化する日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第11回 <プリント配線板の登場> また、プリント配線板に関してはエッチング技術を保有していたネームプレートの会社の多くが1960年に相次いでプリント配線板事業に参入し、家電電化ブームとともに発展していく。 ネームプレートの会社の由来となっているのが、日本シイエムケイは中央銘板の名前から由来する。 1970 年代はカラーテレビが市場を引っ張る製品であった。そのため多くの片面プリント配線板が多量に生産された。紙フェノール銅張積層板が片面プリント配線板に使用され、エッチング加工後、最終工程では1回の打ち抜きによる外形加工で生産性の高い方式であった。そのため低温もしくは常温で打ち抜きができるようにフェノール樹脂は桐油などの油変性で可撓性を付与したものであった。 可撓性を付与すると燃え易くなり、難燃性を付与しながら可撓性を付与するのが大きな技術課題であった。 カラーテレビからその後、据え置きビデオが登場し、同様に紙フェノール片面プリント配線板が使用された。この頃は、日本が世界を席巻していた時代であった。 ビデオの登場により子供の運動会などを撮影してビデオで閲覧することが流行し、カメラ一体型VTRが商品化され、小型軽量化のためガラスエポキシ銅張積層板(FR-4)が使用されるようになり、さらなる小型軽量化のためにエポキシ系コンポジッド銅張積層板(CEM-3)も採用され、標準板厚1.6mmから薄い板厚の0.6mmが採用されるようになった。 当時のビデオカメラは肩に担ぐほど大きく重いものであった。手の平に乗るような小型軽量化の取組みが検討され、1989 年に重量790g のカメラ一体型VTRが商品化され、この機種には0.6mmの薄物4層プリント配線板が使用された。同時期にノートパソコン、携帯電話などが同時に製品化され、いずれも多層プリント配線板が使用され、多層プリント配線板が大量に必要となった。 プリント配線板メーカーが保有している積層プレスは小型で生産能力の関係で、銅張積層板メーカーにある大型多段積層プレスに着目され、内層回路入り銅張積層板を銅張積層板メーカーで生産する方式で対応することになった。3 機種が同時に立ち上がったが、内層回路入り銅張積層板を使うことによってタイムリーに対応ができ、大きく貢献した。 この生産技術は、急増するパソコン需要を賄うために米国向けのパソコン用多層プリント配線板(4層~8層板)にも応用展開され、多量に日本から供給された。 1990 年代になると欧州から環境問題の提起があり、使用する化学物質を制限する動きが始まり、草案段階では臭素系難燃剤が使用禁止物質の候補に挙がったために日本企業は、いち早く新しい難燃方式を開発し、エポキシ系コンポジッド銅張積層板(CEM-3)をはじめガラスエポキシ銅張積層板(FR-4)に適用し、ハロゲンフリー化が進展した。さらに実装段階で使用する鉛はんだから鉛を排除して様々な組成の鉛フリーはんだが製品化された。 電子機器の高機能化に伴って、さらなる高密度化が進展し、携帯電話のメイン基板には12 層程度の多層プリント配線板が使用されるようになった。中には薄型の携帯電話を実現するために約280 個の部品を基板内に埋め込む部品内蔵基板も採用されるようになった。 セラミック系のパッケージを有機系の材料で代替する動きが始まり、ピングリッドアレイ(PGA)に応用展開され、その後、インターポーザに有機材料が使用され、サブストレート基板と言われるパッケージ基板として市場を確保した。この分野では高密度・高精細化が進展し、ビルドアップ層も6 段になるものまで出現してさらなる高密度化が進展した。<参考資料>1.青木正光、“ 電子回路基板の黎明期を振り返る” エレクトロ ニクス実装技術 Vol.35 No.3 pp20~pp25(2019)2.三浦勇三、奥野健男、金田栄一、加藤 亨、朝生忠雄、四??朝 男、“プリント配線板(1) <東芝銅貼テコライト積層板を中 心にして>”東芝レビュー Vol.13 No.12 p1222(1958)3.井深大、“トランジスタラジオの開発<家具のサイズからポ ケットサイズへ”pp1~pp3