ブックタイトルメカトロニクス12月号2018年
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メカトロニクス12月号2018年
44 MECHATRONICS 2018.12 日本の産業構造の変化にともなう電子機器分野の話題商品を追う第6回 <電子産業を浮揚させた施策>連 載 日本の電子産業を浮揚させたのは、背後に大きな施策があったことが影響している。その背景を知る上で、少し、きっかけとなった時点まで遡ってみよう。 電子産業を進歩発展させたのは、真空管の時代からトランジスタ、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)へと半導体技術の進化によって高機能化・高密度化を達成することができたと言ってよいかもしれない。半導体の微細化によって高密度化が達成され、電子機器の高機能化や軽量化にも寄与することになった。さらに電子計算機の商品化には多くの技術開発が必要であり、初期の段階は真空管を使用した第一世代の電子計算機として“ABC”(=Atanasoff-Berry Computer)1)や“ENIAC”(=Electronic Numerical Integrator andCalculator)2)が米国で登場した。 世界最初の電子計算機として引き合いに出されるENIACは、1946年にペンシルべニア大学で完成させたもので、長さ15m、幅9m、所要面積165m2(高さ2.4m、奥行き0.9m、幅24m)で重量30トンにもなるものであった。この電子計算機には、17,468本の真空管、70,000個の抵抗器、約6,000 個のスイッチ、7,200 個のダイオード、1,500個のリレー、10,000個のコンデンサ等が使用された。能力は、5,000回/秒の計算をし、消費電力150kWにもなった。この電子計算機の開発の顧問にMr. J. von Neumannが参画した。 1949年に円周率計算にENIACを使用し、小数点以下2,037ケタを70時間かけて計算した実績がある。ENIACの一部は、ペンシルベニア大学やスミソニアン博物館の国立アメリカ歴史博物館などで展示されている。 ENIACは17,468本もの真空管を使っているため、真空管は毎日数本が壊れ、修理には毎回30分もかかったという。真空管のフィラメントが電源投入時と切断時に最もストレスがかかり、それが原因で故障となっていた。いろいろと工夫して改善されたが真空管は2日に1本の割合で壊れていたという。 そのような真空管時代に新たな時代がきたのである。それは、1947年のことで、アメリカのベル研究所においてショックレー、ブラッテン、バーディーンの3人の博士の研究チームがトランジスタの基本動作を発見し、真空管からトランジスタへと進化した。 それからさらに約10年後に、電子産業の発展の段階で大きな事件が起きた。1つは1958 年にテキサス・インスツルメンツのキルビー、ノイスが集積回路(IC)を発明したことであった。このICは1961年に小型コンピュータへの応用が可能であることが実証され、そして1963年には米航空宇宙局(NASA)がICをアポロ計画に使用し、「第2次エレクトロニクス革命」の時代へと繋がった。当時の日本の電機企業にとっては想像を絶する高い技術の話しであった。 もうlつはコンピュータのハード・ソフトウエアの開発であった。1958 年、IBMは8 億ドルを投じて、特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 青木 正光年 度 内 容1939 年 ベル研で真空管式電子計算機 BTL1を完成1942年アイオワ州立大学のアタナソフ(John Vincent Atanasoff )とベリー(Cliff ord Edward Berry)によって作られた真空管式電子計算機で、”Atanasoff -Berry Computer”の頭文字をとって、 ABC と名付けられた1946年真空管を用いた第1 世代の電子計算機として”ENIAC”がペンシルベニア大学で開発されるENIAC(University of Pennsylvania)2)1947年アメリカのベル研究所においてショックレー、ブラッテン、バーディーンの3 人の博士の研究チームがトランジスタの基本動作を発見→半導体産業の発展1949年アメリカのマグネコード社がステレオテープレコーダーをオーディオフェアで発表1950年プログラム記憶方式(Stored Program)を最初にとりいれられたコンピュータEDVACを開発最初の商用コンピュータであるUNIVAC-1を商品化(真空管採用)1951年アメリカのフィラデルフィアのレミントン・ランド社とイギリスのランカシャー州のフィランティ社が、同時に電子計算機を量産、商品化する1953年IBM 最初の電子計算機 IBM650を公表し、1954 年より出荷を開始する コンピュータ界のT 型フォードとも呼ばれた真空管式電子計算機1954年イギリスのライオンズ・エレクトロニック・オフィス(レオ)のビジネス用電子計算機が、ロンドンのキャドビー・ホールのJ・ライオンズ食品会社本社で稼動を開始1958年テキサス・インスツルメンツのキルビー、ノイスが集積回路(IC)を発明IBMが第二世代大型コンピュータIBM1401を開発1959年IBMが東京都大田区千鳥町に日本IBM千鳥町工場を建設し、コンピュータの生産を開始する1961年集積回路(IC)が小型コンピュータへの応用が実証される1962年IBMがIBM1440を発表1963年NASAが集積回路(IC)をアポロ計画に使用→第2次エレクトロニクス革命へ1964年IBMが集積回路(IC)を使った第三世代大型コンピュータIBM360を開発1976年Cray Researchがスーパーコンピュータ Cray-1を開発1979年IBMが大型コンピュータ IBM4331/4341を開発1980年IBM が大型コンピュータ IBM3081を開発1982年Cray Research がスーパーコンピュータ Cray X-MPを開発1983年Control Data がスーパーコンピュータ CYBER205 を開発1985年Cray Research がスーパーコンピュータ Cray-2を開発表1 欧米の電子工業界の動き