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トピックス
2015.04.09
プリント配線板における不具合について
PCB Express

 

④残渣

 プリント配線板の製造において洗浄工程が大きな役割を果たしていることは周知の通りである。主な目的は、回路を形成する過程において異物を除去する必要があるためだが、この場合の異物は物理的なものに限定されない。すなわち、化学的な見地から見た不純物も異物の一類型と考えられる。
 不純物を除去するためには主に酸を利用する。スルーホールのめっき前とめっき後、表面処理前などは『ソフトエッチング』と称される酸洗工程によって銅箔表面を清浄に保つのであるが、酸性物質を使用するため、作業後には中和、水分による洗浄が重要となる。これが不十分であると、残った酸がプリント配線板のスルーホールの品質を損ねてしまうことになる。ここで述べる残渣とは、ソフトエッチングまたは酸洗の工程の後に、意図せずに残ってしまった酸性物質を意味している。この残渣の恐ろしさは、酸性物質であるため経時変化によって銅を融解させることにある。その概念図を、図3に示す。

図3 残渣

  電子機器における採用が広がったビルドアッププリント配線板であるが、非貫通スルーホールの酸洗工程で使われた薬品が残渣となって、経時変化によってスルーホールが断線に至る場合があり、出荷時には良品であった製品でも数日後に断線してしまうといったケースもある。写真4に示すのは、実際に発生した不具合である。このケースでは、出荷後2日程度で、一部の非貫通スルーホールの銅が融解されてしまっていた。

写真4 残渣による不良

  このように、めっき工程には問題がなくても、後工程、特にソルダレジスト、表面処理の工程において、目視(画像)だけでは判定することができない不具合を発生させるリスクが潜在していることを理解した上で製造工程をチェックすることをおすすめしたい。

 ⑤めっき剥離

 めっきの析出が不十分である場合は、スルーホール内壁のめっきが剥がれる不具合が発生しがちである。日本国内製のプリント配線板でも発生する可能性があるので、依頼先の品質チェックは欠かせない。写真5はスルーホールめっきが不十分で、ソルダリングにおいてはんだがぬれていない不具合例である。

2.材料の品質

  海外生産の展開が進む現在では、海外で製造された材料を採用したプリント配線板は珍しいものではない。しかし、いうまでもなく、プリント配線板の材料にも品質の高低があることはあらかじめご理解いただきたい。たとえばガラスエポキシ材(FR-4材)のガラスクロスについても、日本製の材料はガラスクロスを形成するヤーンの1本にも表面処理が施されており、またガラスクロスにも『開繊処理』という特殊な工程が採用されている。海外製品でも日本製と同等の品質を有する材料が一般的になりつつあるが、プリント配線板材料にも品質に優劣があることをあらかじめ理解し、評価試験を実施した上で製品に採用することは重要である。
 プリント配線板メーカーによっては材料に選択肢がない場合があり、特に海外メーカーにプリント配線板の製造を委託する場合には、採用される材料の品質も重視していただきたいと考える。材料の性能は表1-2で紹介した試験を実施して確認することができるが、ここでもう一つ、信頼性試験について絶縁耐圧試験を紹介しておきたい。
 図4及び表2にあげるのはJPCA((社)日本電子回路工業会)が制定した試験内容である。連続した回路に所定の電圧を一定時間付加して、その後に配線の信頼性を評価する試験で、プリント配線板材料の信頼性を確認することができる。発注先に試験を依頼して結果を提示させるとよい。図4の試験パターンのほか、異なる層との絶縁信頼性を評価する『層間耐圧試験』の評価の基準として採用される場合がある。価格メリットを最優先にするのではなく、材料の品質についても確認しておくべきである。

写真5 めっき剥離

図4-1 絶縁抵抗試験俯瞰図

図4-2 絶縁抵抗試験断面図

試料数 設計試作評価用 n≧5 (推奨は10以上)
量産試作評価用 n≧10
表2 プリント配線板環境試験方法 通則 (JPCA-ET01-2007)

 

 

 

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