ビジネスコミュニケーションを加速する
BtoB ニュース専門サイト | ビジコムポスト

テクニカルレポート
2014.09.02
EMSの構築・運用による大幅な廃棄物の削減とその成果
(株)山形メイコー

 

メイコーグループへの水平展開

1.宮城工場での顕著な廃棄物削減の実現

 宮城工場は2004年12月、宮城県石巻市に、高密度ビルドアップ多層電子基板とした高密度多層電子回路基板の専門工場として建設された。最先端の高信頼薄型エニーレイヤ基板の開発に成功し、さらにその技術を利用した量産体制も早期に確立した。2007年にはこのことが評価され、『日経ものづくり大賞』を受賞している。
 宮城工場は大量の電気・水・金属類を使用する電子回路基板の生産プロセスを手がけているため、それに伴って、廃液をはじめとした廃棄物量も膨大な量となっていた。そこで、山形工場からの水平展開として、2006年から『廃液プロジェクト』を発足させ、山形工場における改善実績の経験者であった筆者が中心となって改善を推し進めた。
 山形工場では廃棄物改善に7年を要したが、宮城工場への技術水平展開としては、約2年間という短期間での改善に成功。2009年度の効果金額(外部処理費—内部処理費)は2億9千万円となった(表5、表6)。

表5 宮城工場の年度別・種目別効果金額の推移

表6 宮城工場の原単位での削減推移

 また、宮城工場での今回の改善設備投資額も7,700万円で、償却期間が3.2ヶ月と短期間で顕著な環境改善を実現している。
改善項目としては、山形工場と同様に、廃アルカリ内部処理、排水処理の過程で発生する汚泥の有価物化、濃厚酸廃液内部処理、過マンガン酸廃液処理などである。
 ただ残念ながら、2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴って起きた津波によって宮城工場は壊滅状態となり、約2年間にわたって閉鎖となってしまった。現在では同工場を整備して新たな設備を導入しており、2013年4月から再稼動させる予定である。

2.中国広州工場・武漢工場・ベトナム工場への水平展開

(1)RO水
前述したように、2004年に山形工場を皮切りに地下水をRO水に精製する装置を導入したが、その後、メイコーグループの中国・広州工場、武漢工場、さらにベトナム工場についても水平展開として導入を図った。同所においても、地下水や工業用水を、逆浸透膜を使用して不純物をろ過して純水に近いRO水にし、これを活用することで水資源の節約と製品の品質の向上を実現させた。
(2)コンプレッサ省エネ制御システムの導入
こちらも先に述べたように、2007年に山形工場にコンプレッサ省エネシステムを導入し、全電力の20%を占めるコンプレッサの電力削減を図った(図5)。これは同時にCO2削減への挑戦でもあった。その結果、消費電力の削減量は1,091千kWhとなり、CO2削減量としては、468t-CO2となり、電力削減額は1,488万円の効果となった。

 

図5 コンプレッサ省エネ制御システム

 これを受けて、2009年には、山形工場の約5倍の電気量を使用している広州工場や武漢工場にも同システムを水平展開して導入し、電力削減を図った。

メイコーのステークホルダーから得られる評価と褒章

メイコーのCSR活動に関連して情報発信した学術論文は、巻末の引用文献に記載しているが、さらに顧客、学会、官公庁、取引関係者などからの依頼によって、山形工場における環境改善事例を紹介することを中心に、多くの講演を実施している。

 これまでステークホルダーより受領した評価・褒章には下記のものがある。

 2005年 山形工場 『山形県環境保全推進賞』受賞
 2007年 宮城工場 『日経ものづくり大賞』受賞
 2008年 山形工場 リコー『グリーン・パートナー賞』受賞
 2008年 山形工場 山形県環境保全〔選考委員特別賞〕受賞
 2008年 山形工場 経済産業省後援『クリーン・ジャパン・センター会長賞』受賞
 2011年 ベトナム工場 『エネルギー革新的管理部門』で準優勝

 

メイコーの今後の展望

 国内大手の電子回路基板メーカーとして、メイコーでは環境重視のサステイナブル経営(持続性のある経営)の実践を通じ、社会的責任CSRを果たすことを宣言・実践している。そして生産プロセスから発生する環境負荷や環境リスクを低減し、資源効率を高めて持続可能な社会の構築に貢献している。環境改善については、山形工場を牽引役として、国内の宮城工場や福島工場、さらに海外工場の広州工場や武漢工場やベトナム工場に水平展開を進め、顕著な環境改善成果を挙げて社会的な認知を得ている。
 メイコーは、このように全工場で環境改善を推し進め、地球環境に向けた活動を推進し、安全・安心を提供できる社会に向けて信頼される企業を目指していく。
 

<引 用 文 献>
1) 西嶋・村形、IT産業における環境費用削減成功事例、化学経済誌2004年12月号・2005年1月号
2) 西嶋・村形、IT産業における環境費用削減成功事例、愛知学院大学総合政策学部紀要、2006年6月
3) 西嶋・村形、ゼロエミッションに向けての経営革新、化学経済誌2007年3月号・4月号
4) 西嶋・村形、ゼロエミッションに向けての経営革新、愛知学院大学総合政策学部紀要、2007年6月
5) POSDI、Innovate Environmental Management in manufacturing PCB practiced by Yamagata Meiko, Working Paper ,Aichi Gakuin University(2008.3)
6) 村形、ゼロエミッションに向けての環境経営革新、日経情報ストラジー、2009年1月
7) 西嶋・村形、CSR・サステイナブル経営の展開、愛知学院大学総合政策学部紀要、2009年9月
8) 村形、電子回路基板製造工程で発生する廃アルカリ・廃酸等の削減と資源回収、産業調査会 事典出版センター(リサイクル・廃棄物事典 編集委員会)、2012年3月

 

 

 

会社名
(株)山形メイコー
所在地