ビジネスコミュニケーションを加速する
BtoB ニュース専門サイト | ビジコムポスト

テクニカルレポート
2016.09.28
韓国におけるFPCの技術動向
CST(株)

 

写真6 HOT

写真7 外形加工

写真8 最終検査

  まず、材料メーカーから入ってきたロール状の両面銅張の原材料を自社の製造規格であるワークシート形状に裁断する。当社で採用しているワークシートサイズとしては、一端が250mm幅で、もう一方の長さは360,420mm~500mmまで製品サイズに応じて各種サイズで製造を行なっている。

 裁断したワークシートに、ユーザーから入手したスルーホール位置データに従ってスルーホールの穴あけを行なう。板厚が薄いFPCでは通常ワークシート一枚ずつ穴あけを行なうのではなく、板厚やパターン密度に応じて数枚重ねた状態で行なうのが一般的であるが、位置ずれを押さえる必要があることと、製品品質の確保の観点から、ドリル交換時期や回転スピードコントロールといった部分で細心の注意が必要かつ重要な工程の一つであるといえる(写真1)。

 穴あけを完了すると、次はスルーホールを形成する工程であるが、銅めっきの方法は、まずスルーホールの内壁にめっきを付けるために無電解めっきを行ない、これによってFPCの両面を電気的に導通状態とする。次に厚さを確保すべく電解めっきを施す(写真2)。スルーホール形成が終了すると、次はパターン形成の前工程となる感光性フィルム(フォトマスク材)をFPC両面に形成するが、FPCの素材はパターン形成後の工程で寸法変化が生ずるため、マスクは後工程での寸法変化を考慮して、ユーザーから入手したパターンデータを補正したものを使用して行なう。パターン形成工程では、露光という工程があり、ここではFPC工程の中で最も神経を使う作業で、パターン幅、パターン間短絡や断線などの原因となる、ごみ・埃・毛髪などの混入を遮断する必要があり、各社ともクリーンルーム内で作業を行なっている(写真3)。この工程は、正確には露光→現像→フォトマスク除去があるが、最終的にはパターン配線およびスルーホール用ランド部以外の不要な銅が露出した状態となる。パターン形成が完了すると、次はエッチング工程に入り、不要な銅は除去され、ここで初めてFPCの表面に配線パターンが現れる(写真4)。

 この状態のFPCは、銅パターンが露出した状態のため、次の工程で表面を保護するためにカバーレイと称するFPCのベース材料と同じ材料のフィルムが仮接着する。このベース材と同じ材料で保護することにより、FPC自体の膨張・収縮に順応し、結果として長期信頼性の確保が実現できることとなる。

 なお、この工程も露光の工程と同様異物の混入を避ける必要があることから、クリーンな環境下での作業を行なっている(写真5)。

 最近では、LED照明用としてのFPC採用が増えてきており、その場合には、白色・黒色のカバーレイを使用している。

 これでほぼ基本となる製造工程は終了し、最後にすべての材料を積層した状態で鉄板で挟み、ホットプレス機を用いて加熱・加圧して硬化させ、ベース材とカバーレイを完全に密着・硬化して一体化する(写真6)。

 FPCは、他の基板に実装されたコネクタとの接続のためにACF(異方性導電フィルム)を使用したり金端子をそのまま接点として利用するケースが多く、FPC上に金めっき端子が電解めっきで形成されることが多くなっている。金めっきは管理コストがかかるため、自社で行なうことは少なく、当社でも金めっき作業は協力会社に依頼している。しかし、金めっきの品質管理は製品全体に関わるため、協力工場の工程管理状態や受け入れ検査は日常的に慎重に行なっている。

 配線パターンが形成されたので、個々の製品対応で通電検査を実施する。この検査では配線のオープン・ショートを検査する。通電検査は製品の仕様やロット数に応じて自動で行なう場合と半自動で行なう場合がある。

 通電検査が完了すると、次は外形加工工程となり、ここでは高精度な加工が必要となる。

 FPCの場合、リジット基板と違い、かなり薄い状態での外形加工を行なうためFPCに高精度な位置合わせのガイド穴を設け、金型を使った打ち抜きで加工を行なっている(写真7)。

 最後に全数を対象に出荷検査を行なう。検査項目としては、外形寸法精度確認、ランド形状、パターンの太さやピンホールやエッチング時の銅の残り、異物の混入などを確認し、問題が無ければ梱包して出荷となる(写真8)。

 なお、製造工程内では、各所で抜き取り、全数での検査を実施し、必要に応じてロット不良とする対応も行なっている。また製品の精度やユーザーの要求に応じて、はんだ耐熱性や高温高湿試験や引っ張り強度、屈曲性試験などを行なう場合もある。もし出荷検査で不具合が発見された場合には、出荷停止とすることもある。

 当社では、FPC製造にあたりQC(品質管理)やQA(品質保証)部門は、製造部門とは切り離し大きな権限をもった部門として位置付けている。

韓国におけるFPCの技術動向

  現在、韓国には50社を超えるFPCメーカーが存在しているが、製造している製品は日本のメーカーの場合と変わらず、その多くは、前述の通り携帯電話やスマートフォンに使用されるLCD周辺用途がほとんどを占めている。

 一般論でいえば、韓国のシステムメーカーはFPCを部品としてではなく、一基板として考えている。

 一例を挙げれば、システムメーカーでLCDのバックライト用としてLEDが実装されたFPCを調達する場合、FPCメーカーにFPCのみを発注すると同時に、完成したFPCをシステムメーカーが認定した部品実装会社に納入するよう指示する。すなわち、多くのFPCメーカーはFPCのみを生産しており、日本を含めた他の国のFPCメーカーのように部品実装まで行ない、実装品として責任をもってシステムメーカーに納入することは行なっていない。

 韓国でのFPC利用の現状は、前述の通りであるので、ほとんどが片面・両面FPCとなっており、一部の機器で 使用されている多層FPCといえども、せいぜい3~4層程度にとどまっている。

 日本でも知られた韓国のFPCメーカーでの月間生産量は、数社が100km2以上となっているが、多くは50km2以下の規模で生産を行なっている。現在、韓国FPCメーカー各社は、今後の高密度・多層化FPCの需要を予測して、ファインパターン化(L/S:40/40μm)や高多層化(~10層)に向けての技術確立を完了している。

 ここ最近、一部の自動車メーカーがヘッドライトやバックミラーへのFPC採用を始めたことや医療機器での採用を検討し始めており、今後は自動車産業や医療機器へのFPC利用が増えると期待している。

 欧米ではすでに、自動車用(ヘッドランプ・バックランプ・バックミラーなど)としての採用や医療機器用(CT・MRIなど)や航空宇宙産業への導入が活発化しており、そういう意味では、韓国国内においてもこれまでのLCDバックライト用途から新たな産業への展開が始まると期待している。

 新たな産業機器での採用は、今以上の高密度・高多層FPCの需要のみならず、高付加価値化したFPCの市場が生まれるといった観点から、非常に重要なこととして捉えている。

 しかし、このような分野に進出するためには、国際標準をクリアした生産体制、環境対応の認証取得が必須となることから、当社では2003年5月にUL認証を取得し、2004年4月にISO9000とISO14001を取得し、さらに2011年9月には自動車関連部品の製造に対応すべくTS16949の認証取得を完了している。

まとめ

  これまで、システム開発者の方々にとって、FPCは高いという先入観があったと思われるが、本稿の製造工程の項で説明した通り、リジット基板とは違い、随所でFPCがもつメリット(薄い、軽い、柔軟性)を活かすために数々の工夫を行っていることと、銅箔にはFPCの柔軟性を確保を目的として、圧延銅箔を使用しているために、多少コスト高になっていることをご理解いただけたのではないかと思う。

 FPCを採用することは、システムのトータルコストで見ればコネクタ使用量の削減による効果や、R/F基板の採用によりメイン基板として利用することが可能となる。したがって、FPCがもつメリットを最大限活用した使用法に限定し、機器内での複雑な形状(隙間)に対応した基板としての利用が可能となり結果として、小型・軽量化した電子機器を低価格で実現できる可能性をもっている、といえる。

 この先、現在以上にFPCを利用した機器が出現することを期待している。

 当社は今後、日本の機器開発メーカーの技術者の方々とのコミュニケーションの機会を密にし、お客様からのニーズに迅速に対応させていただき、より良いFPCの生産に向けて品質・技術力の向上に努めていく所存である。

 

会社名
CST(株)
所在地