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テクニカルレポート
2016.09.09
透明フレキシブル基板で イノベーションする
シライ電子工業(株)

 

はじめに

  論語に『君子の徳は風なり、小人の徳は草なり。草之に風を上うれば、必ず偃す』とある。この意味は『上に立つ者の徳は、風のようなものであり、下にある人の徳は草のようなものである。善い風を吹きかければ善い方になびく』という意味である。

 これは創業者が私たちに投げかけた論語である。比喩で、いい心がけ、いい習慣を大切にすれば、必ずいい風が吹き、成功に辿り付けるということが、私が創業者から学んだことの一つである。今では創業者から経営体制も移行し、創業45周年を迎えることができた。

 さて、これからのビジネスは、市場変化と顧客ニーズの変化と多様化で、従来ビジネスの延長では企業成長ができなくなってきているのは周知のとおりである。某メーカーでは、『脱本業』の積極策と成功でこれからのビジネスモデルを構築し、大いに見習うべき点がある。規模は異なれど、今までから『新しいことをやってみよう』の精神を育成する経営戦略としての人材教育を行ってきた我々の部門にとっては、この『やってみよう』は、これからの変化の時代もイノベーションしていく必要があるという点では、運とさきがけと未来を切り開いていく役割があったといえる。

 このようなシュンペーターのイノベーションで注目すべきは、『新しい供給源を獲得すること』であり、技術革新における新材料の開発を重視すべきことを示している。

図1 透明フレキシブル基板『SPET』

  さて、今回ご紹介する透明フレキシブル基板『SPET』(図1)は、この変革時期にいい風を吹かすことができる視点とやってみようの観点から生まれた新材料である透明プリント配線板材料を用いた加工品である。新しい取り組み技術として、従来のコア技術であったプリント配線板の加工・管理能力をベースに、プリント配線板材料の基材生産の構築、ラージエリアエレクトロニクスの基板加工生産の構築、組立て実装生産方式の構築などを行っている。この新しい透明プリント配線板材料及び透明フレキシブル基板『SPET』で、新たな市場を切り開いて、日本市場にもいい風を吹かしていきたいと考える。

透明フレキシブル基板とは

表1 類似商品分類表

  透明フレキシブル基板とは、ポリエチレンテレフタレート(PET)に銅箔を張り合わせた基板であるが、一体どういった基板なのであろうか?インターネットで『透明フレキシブル基板』と検索をしてみると、今回ご紹介する透明フレシブル基板『SPET』以外にも、沢山の透明フレキシブル基板がヒットする。ここで、先に同名で誤解を生みやすい透明フレキシブル・ディスプレイやディスプレイ・フィルムまたはシールド・フィルム用の透明フレキシブル基板との違いについて述べる。このディスプレイ用の透明フレキシブル基板は、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、シクロオレフィンポリマ(COP)、透明ポリイミド(PI)などの透明材料をベースに、薄膜製膜や導電膜を印刷して、有機ELや液晶などに用いるのが特徴な透明フレキシブル基板である。今回開発した透明フレキシブル基板『SPET』とは名前が同様であるが、ディスプレイ用途とは異なる厚膜分野での使用を目的としている。また、PET基板も以前から存在する。このPET基板とも仕様、用途が異なる。一般的なPET基板は、PET上に導電性のインクを印刷して形成するタイプが多い。そのため、透明フレキシブル基板『SPET』よりも導体抵抗値が高く、またリフローはんだ付け部品実装ができない。また、PET基板の銅箔接着タイプも存在するが、透明用途を目的とした基板ではないため、おのおの別の特徴をもっている(表1)。

 このように、PETと高耐熱樹脂と銅箔を張った3層構造の透明フレキシブル基板『SPET』は、これらの透明フレキシブル基板やPET基板とは異なる特徴があり、以下で透明フレキシブル基板『SPET』を説明する。

透明フレキシブル基板『SPET』の特徴と特性

1.高透明

 透明プラスチックの内部または表面の不透明なくもり様の外観度合いを表すヘイズは6.1%である。また、全波長域での透過率は88.0%である。よって、透明フレキシブル基板『SPET』越しに景色を透かして見ても、先を見渡すことができるのが第一の特徴の高透明である。

2.高耐電流・低導体抵抗

 薄膜製膜や印刷で形成した導体と比較して、透明フレキシブル基板『SPET』は18μmの銅箔を採用しているため、リジッド基板と同様に電流を流すことができる。

 たとえば、1Aの電流が必要な場合、パターン幅2mm、導体抵抗は2mΩ/10mm以下で、パターンに電流を流すことができ、温度上昇も極めて少ないことが第ニの特徴の高耐電流・低導体抵抗である。

3.高リフローはんだ耐熱

 薄膜製膜や印刷で形成した導体では不可能であったはんだ付け部品実装が可能なため、部品実装もリジッド基板と同様にマウンタとリフローはんだ実装での自動実装対応なのが第三の特徴の高リフローはんだ耐熱である。

表2 透明フレキシブル基板の一般特性

4.エコロジー

 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル、ポリ臭化ジフェニルエーテルの6物質の使用を制限するRoHS指令に対応しており、環境に優しいことが第四の特徴のエコである。

 透明フレキシブル基板『SPET』の一般特性は表2となる。特徴の一つである高透明以外は、リジッド基板やPIを用いたフレキシブル基板の特性値と同等になる。さらに、リジッド基板やフレキシブル基板と同様の取り扱い、かつ部品実装であり、透明な特徴以外の相違はなく、いつも使っている基板として使用可能である。

 

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