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テクニカルレポート
2015.11.27
はんだ付け用フラックス(活性剤について)
(株)クオルテック

 

3.活性力と信頼性

  1、2項で『活性剤には腐食性があること』『活性剤の強弱とは何か』を述べた。もう少し活性剤の特性について考えてみよう。

 まず、腐食性と同じように信頼性に重大な影響を及ぼす吸湿性について考える。ここでは、界面活性剤の指標に使われるHLB(Hydrophilic-Lipophilic-Balance)で考えてみる。HLBは、化合物をおのおのの部位に分け、その親水性を差し引きすることで水との親和性を数値化している(図4)。

図4 HLB

図5に活性の強弱とHLBの計算結果を示す。官能基は親水性で炭素部は疎水性となるため、活性の強い化合物ではおのずと親水性が強くなる。このため、強い活性剤は、吸湿による腐食およびイオン化によるイオンマイグレーションが発生しやすい。また、吸湿性の強いフラックスではソルダペーストの粘度上昇が発生し易いことも指摘されている2)。

図5 化合物の親水性と活性力

  活性力の強いRAフラックス(活性化ロジンフラックス)と弱活性のRMA(弱活性化ロジンフラックス)ソルダペーストをリフローし、放置後のフラックス中へのCu溶出量を調べた(図6)。RAはRMAと比較しおよそ3倍のCuがフラックス中に検出された。また、20℃放置と比較し85℃でのCu増加量が著しい。これは、はんだ付け性の良いRAフラックスの腐食性が強いことを示すとともに、フラックスが酸化膜だけではなく、Cu自体を溶かしていることがわかる。野々垣らは、このCu溶出速度が絶縁寿命に影響を及ぼすことを報告している3)。この報告からは、活性剤の強さと添加量が信頼性に影響を与えることも伺われる。

図6 Cu溶出量の比較

4.活性剤の性質

  活性力が強いとはんだ付け性にすぐれるが、腐食性や吸湿によるマイグレーションの発生が懸念されることを述べた。ここでは、活性剤の他特性についても考えてみる。

 強い官能基を複数付加し、炭素が少ない構造の化合物が活性力が強い。このことから、活性剤の一般的な性質をカルボン酸を例として表1に示す。一般に炭素が多く分子量が大きい化合物の融点、沸点は上昇する。一方、活性力が強い低分子量の化合物は沸点が低く、揮発によりその効果を発揮できない場合がある。また、ロジンへの相溶性は重要な項目である。これまで述べてきたように、活性剤がロジン中に拡散、分散されていることで、腐食やイオンマイグレーションの発生を防止してきた面がある。相溶性が悪く活性剤がロジン表面に露出すると、絶縁性を損なう危険性が強くなる。

表1 活性剤の一般的な性質

  冒頭で活性剤の選択の難しさを指摘した。はんだ付け性の良い化合物を見つけることは比較的簡単だが、この効果が優れる成分の大半は、腐食やマイグレーション性能が劣る。また、揮発性やロジンとの相溶性など他特性も考慮する必要があり、活性剤の選択を難しくしている。

5.ロジンの活性力と信頼性

図7 アビエチン酸の化学式と分子量

  これまでに、フラックス主成分となるロジンは『活性力を有し、残渣の信頼性も高い』と述べてきた。ここで、ロジンの構造からその理由を考えてみよう。

 図7にロジンの代表成分であるアビエチン酸の化学式を示す。

 ロジンにはカルボキシル基(−COOH)が付加しており酸化膜を除く効果がある。そして、水との親和性に劣る炭素が20含まれ、化合物全体としては撥水性が強くイオン化しにくい構造になっている。このことから、活性力を有し、残渣の信頼性は高いといえる。ただし、活性効果がそれ程良いとはいえず、実際に使用するためには活性剤の力を借りることになる。

 活性剤は、はんだ付け性への効果は大きいが、種類や添加量を誤ると電子機器の故障に直結する成分といえる。

 

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